今年、東京高等学校は創立150周年、東京実業高等学校は創立100周年を迎えました。コロナ禍の中、こうして両校の生徒、教職員が一同に集い式典を行う事が出来ました事を大変うれしく思います。
両校の長い歴史を全てお話しする事は出来ませんが、要点を少し話したいと思います。
まず東京高等学校ですが、長く続いた武士の時代からようやく近代国家へと動き出した明治維新の5年後に明治政府が学校制度をしき、全国民に等しく教育を受けさせる事となり多くの私塾が作られ、その一つが数学者上野清の創設した数学塾でした。
その後、明治32年文部省が中学校令を定め、数学塾は東京中学校と改称し現在の東京高等学校へと発展していく基礎を固めていきました。
大正10年には創立50周年を迎え、その記念事業としてこれからの産業近代化を見据えて商業・工業の専門家を育成する実業学校の設立認可を取得し、東京実業学校が創設される事となりました。その一番の目的は、社会に出てすぐに役立つ人材の育成であり、商業科、機械科で専門科目を学び技術身につけ、社会に貢献出来る卒業生を数多く世に送り出しました。
こうして、大正11年、東京中学校、東京実業学校の2校が始まり、当時の神田小川町の校舎で午前中は東京中学校が授業を行い、午後に東京実業学校が授業を行っていましたが、生徒の増加により昭和9年に東京中学校は鵜の木に移転、現在の東京高等学校として発展を遂げていきました。
東京実業学校の方は、神田小川町の校舎に残りましたが、こちらもまた生徒増加と共に手狭となり、蒲田に土地を購入、昭和11年に移転し現在の東京実業高等学校が始まりました。
両校の長い歴史には、その時その時代におこった天災や人災など測りしれない苦難の道がありましたが、先人達はくじける事なく私達の時代迄つなぎ続けて、今日この日を迎える事が出来た事をしっかりと胸に刻んでいかなければなりません。
令和という時代は、まだ始まったばかりですが、すでに新型コロナウィルス感染症というパンデミックにさらされ、今年はロシアのウクライナ侵攻というあってはならない戦争が勃発、温暖化によって年々被害の大きくなる天災など、先行きの分からない時代に皆さんは長い人生を歩んでいく事になります。
それでも歴史を学んでいく中で、どんな社会になろうとも常に自分を見失う事なく信念を持って自分の道を歩んでいく人間の強さを私達は学び認識しています。皆さんが、この先の長い人生で自分を信じ心身共に健やかで強い精神を持って立派な大人へと成長してくれます事を心から願っています。
150周年、100周年を迎えて、先人達の思いと共にこれから先も困難に負けず、両校がより良い人材を育て世に送り出す事を誓い式辞と致します。